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  • v044 絶叫マシン

    ■絶叫マシン

    札幌

    様々な問題を次々に起こすドンキと言えば、あれですね。
    ドンキーコングでもない、びっくりドンキーでもない、そう、ドンキホーテですね。六本木のビルの屋上に絶叫マシンを作ろうとして、住民の反対にあって撤去した事件は記憶に新しいです。

    さて、札幌ススキノにあるビルの屋上にでっかい観覧車ができました。絶叫マシンのような騒音はないものの、夜中にカラフルなネオンがチッカチッカしてるのを見ると、やってることはドンキとあまり変わらないと思うのですが、苦情が出たという話も聞かず、テレビでも否定的な意見はなく、むしろみんな喜んでいるようです。

    札幌に高層マンションが乱立していることから、景観や日照権やビル風などが問題となり、札幌市によって建物の高さ制限がなされたのは最近の話です。碁盤の目にきっちり区画整理された都市ですから、特に景観には敏感なのだなと思っていました。そこに現れたチッカチッカの観覧車。

    うちのマンションから見えるんです。昨年から建築されていくアーチ状のものを日々見ておりました。何だろうと思いながら。それがだんだん観覧車だということがわかってきて思ったものです。
    「ドンキじゃないのか。ありゃあ問題になるぞ」と。

    ところが何の障害もなくあっという間に出来てしまいました。(5月3日営業開始)
    そして市や市民に簡単に受け入れられてしまいました。不況の札幌(北海道)において経済効果が見込めると踏んだのか、景観を壊していないと判断したのかは分かりません。

    できてしまったものはしょうがない。

    実は私はかなりの高所恐怖症なため、観覧車には乗りたいとは思わないのですが、高いところが恐くないという人が「話題作りに」と誘うのでシブシブ乗ってみることにしました。と言ってもやはり恐さで景色を楽しめるとは思えません。そこで多少の「恐怖を緩和するお薬」を飲んでから乗ることにしました。

    5月9日の夜、米だけでできた透明の液体で、子供には理解しにくい味のする「お薬」を飲み、気を大きくして現場へ向かいました。

    それは、「NORUBESA」(ノルベサ=乗るべさ)と言う決して面白くないただのダジャレでつけた名前のビルに、「NORIA」(ノリア)と言うダジャレにもなってない名前の観覧車。

    このNORUBESAビルは地上7階、地下1階の娯楽の複合施設になっています。屋上に設置された観覧車は地上78mの高さ(東京タワーの下の展望台が150m)に到達します。昼間は天気がよければ石狩湾が見えるとのこと。(距離にして10kmちょいですが…)

    観覧車にはちょっとした話題作りのための細工がありまして、32台のゴンドラのうちひとつだけ色が違っています。31台は赤、No.007の1台だけが黄色の「幸せを呼ぶゴンドラ」(ラッキーイエローワゴン)と呼ばれています。幸せの黄色い何ちゃらからのシャレと、ラッキーセブンとを掛けているのでしょう。もう妙なダジャレだらけでどうにもなりません。

    一周約10分。1人600円とちょっと高い。
    いい具合に 「お薬」が効いてご機嫌で乗り込みました。ゴンドラの色がどうだったかは記憶がありません。

    観覧車が一周して戻ってきた時、私は真っ白な灰になっていました。乗って間もなく「お薬」がサーッと切れていきました。それから恐怖のあまり床に座ってイスの部分に伏せていたので風景は観てません。

    観覧車
    手前下の人は、床に伏せるようにして手すりを握りしめ、
    ピクリとも動かない高所恐怖症患者。

    声を出すと揺れるので静かにしておりました。それでも回っているので少し揺れます。そのたびにひたすら心の中で絶叫しておりました。そしていっしょに乗った“高いところが恐くない人”が激しく揺らしませんようにと祈るのでした。

    静かな静かな絶叫マシンに住民の苦情はなさそうです。


  • v042 つくしの季節、つくしを食らう

    ■つくしの季節、つくしを食らう

    つくし

    つくしが食べ物であることを知ったのはちょうど1年前、空き地や公園でつくしがたくさん生えているのを見て、妻が言った「衝撃のひと言」でした。

    「食えるのにもったいない…」

    そこまで貧乏に育てた覚えはないっ、と思いつつ、つくしが食えるということについては半ばデタラメであろうと思いました。食って食えない事はない、という程度のことであろう、と。
    で、つくしを手で触ってみた時、カサカサしてやっぱり食いもんじゃないと思ったのでした。どう見ても美味しくなさそうです。毒キノコをカサカサにしたような、マズそうなつくし。タンポポのクキの方がまだおいしそうに見えるつくし。

    「こんなものは食えんよ、へーらへーら」

    よほど悔しかったのか、 その後、つくしの料理を妻の実家から送ってもらうことになりました。去年の話ですよ。
    やや黒っぽくなったそれは確かにつくしの形をしておりました。そして恐る恐る食べてみたところ、これがごはんのおかずにぴったりの、実にうまい「食べ物」であったのです。

    北海道ではつくしは食べ物と認識されてはおりません。だからつくしは生え放題で、あっちこっちにいっぱいあります。札幌と言えども、公園は広いし山も近いので採ろうと思えばいくらでもあります。

    そんなわけで 今年は自分たちで料理してみる事にしました。

    ある公園に向かって歩いていると、見事なつくしがニョキニョキと道端に生えていました。まるでつくし畑。つくし平野とでも言いましょうか。狂喜乱舞です。野菜畑から野菜を好きなだけ盗むようなものです。そこいらの人間たちにとって雑草でしかないつくしは、採っても採っても罪悪感がありません。脳内快楽伝達物質ドーパミンが出まくりでした。

    つくしの頭が青くてやや不気味に思えても、青い方がむしろいいくらいで、成長して開き切った感じのものはあまり良くないようです。

    ではつくしの調理方法をお教えしましょう。まず「はかま」を取ります。

    ↑調子に乗ってどっさり採りました。 1本1本ひとつひとつ「はかま」を取ります。↑

     

    ↑はかまを取るとちょっときれいになり、取ったはかまはこんなになりました。↑
    はかま取りは2人で1時間半かかりました。はかまは捨てます。

     

    手は汚れます。でも、虫などもついてなくて気持ち悪いということはありませんでした。手慣れてしまったので、道端に生えているつくしを見たら、意味もなくはかまを取ってしまうかも知れません。
    さて、裸になったつくしをよーーーく水洗いします。さっとゆがいて一晩水につけるという説もありますが、うちではよく洗って速攻で炒めることにしました。

    ↑猫は食べ物と認識。んで、はかまを取ったつくしを油で炒めたもの。↑
    ちょっといい色になります。

     

    ボールいっぱいになりました。それを煮立った「だし」に入れます。

     

    ボールいっぱいになったとは言え、実際はものすごく採ったので、もっと量が多いと思いました。かなり縮んでしまいます。
    だしは「かつお昆布だし」を使いました。そこにつくしを入れ煮込みながら「砂糖」を入れ、「みりん」を入れて甘みを、そして「酒」「しょう油」で味付け終了。とっても簡単です。炒めるとき、ごま油を使うともっといい味になりそうです。
    いわゆるつくだ煮って言うんですかね。調味料の分量は「全部適宜」です。(笑)

    忍び寄る猫。最後に「盛りつけ」して食べます。
    時間が経つと味がしみてもっと色が濃くなっていきます。

     

    ちゃんと「つくし」の味がします。 春の味がします。つくしの料理が流行らないのは、多分、はかまを取る作業が機械ではできず、人間がやっても効率が悪いからではないかと思います。たくさん作ったつもりでも縮んでしまうのでちょっとしかできません。そこらじゅうに生えるので価値もなさそうに見え、手がかかれば高くなる。誰も買いませんよね。きっと。


  • v041 妖怪人間ベム

    ■妖怪人間ベム

    怪しい
    怪しい

    両親とはぐれてしまい、路頭に迷っている小さな女の子がおりました。そこに通りかがったのが、見た目にはとても恐い妖怪人間ベムのような男でした。

    ベムは妖怪ですから得体の知れない力もあり実際に恐いのですが、その力が発揮されるのは「悪」に対してであって、か弱い女の子へのものではありません。
    そういうことには子供は敏感で、良い人か悪い人かはすぐにわかるものです。このベム似の男も悪い人ではありませんでした。

    「どうしたんだい、道に迷ったのかい?」
    「お父さんとお母さんがどこに行ったかわからなくなったの」
    「それは大変だ、一緒に探してあげよう」

    そう言ってベム似の男は女の子の手をとって一緒に両親を探してあげました。しかしなかなか見つけることができません。しばらくすると交番が見えたので、迷うことなく交番へ入りました。

    「おまわりさん、この人が私を連れ回すんですけど」
    「ええっ!?」
    「なにっ! お前みたいなヤツが社会を腐らせるんだ」
    「ちっ、違いますよっ」
    「お嬢ちゃん、もう大丈夫だよ」
    「ありがとう、おまわりさん」

    子供というのは、ちょっとしたウソもついてみたいものなのです。
    まあしかし、このご時世、小さな子供に声をかけ、一緒に歩くなんてことは泥棒するより危険な行為となってしまいました。親にとっては子供の命に関わることとなり、学校などにしても子供が知らない人に道を尋ねられてもまず逃げるような指導をするところまできてしまいました。

    このごろの犯罪は徹底して弱者へ向かっているように思います。どうせなら表に出せない大金を隠し持っている政治家をターゲットにすればいいのに、とか、思ったり思わなかったり。(ここ忘れていいですよ)

    さて、札幌のサイクリングロードの道端に、ベムのような風貌の男と女の子が手をつないでいる道路標識(?)を発見しました。なぜか分かりませんが、これがとても奇異に思えたものですから、ついつい写真にも撮ってしまいました。


    さて、この写真を撮ったあと、自転車に乗っていると、このベム兄さんが日本中にたくさんいることに気付きました。


    日本中で帽子をかぶったベム似の男が子供を連れ回しております。昔の日本は安全だったんですね。(何か違う)


  • v040 鳥の話

    ■鳥の話

    カモメ

    旭川でスズメが600羽とか800羽とか、謎の大量死が見つかり全国的に話題となっています。原因はわからず、とにかく不気味なまま推移しています。東京でもハトが、秋田ではカラスが謎の大量死を遂げているとのことで、気持ち悪いですね。

    札幌はと言うと、「北海道の調査」によれば、スズメの姿が見られないと報告されています。これも気持ち悪い話です。

    気持ちの悪くない鳥の話をします。

    日常生活で鳥は意外に気にかかる存在です。まずはカラス。我が家はビルの10階で、周囲は3~5階建てが多く、たくさんのビルの屋上が見えます。屋上と言っても人が上がれるものではなく、ただの平らなコンクリートです。
    その中に1棟、雪解け水の逃げ場がなく、プールのようになっているビルがあります。ここがカラスの遊び場になっていて、3℃くらいの寒い日でもバチャバチャと水浴びをしているのです。やつらは寒くないらしいです。

    カラス
    水がたまっているビルの屋上部分ではカラスがいつも大喜び

    そのすぐ近くが公園になっていまして、一角がハトのたまり場になっています。
    誰かが定期的にエサをあげています。

    このカラスとハトの中に、一度トンビがやってきて、カラスに襲いかかっているのを見ました。ところがこのトンビがカラスの集団による猛反撃を受け、黒い塊となって遠くまで追われていったのです。
    実際には「威嚇」なのですが、まるでカラスの集団にボコボコにされているように見えました。カラスの団結力に感動してしまいました。

    さて、さらに我が家の窓から時々見えるのは、白くてでかい鳥、カモメです。最初に見た時は我が目を疑いました。

    「なんでカモメやねん。どこに海があるねん」(なぜか関西弁)

    海までは20kmほどあります。おそらく「でかい石狩川」の支流「そこそこでかい豊平川」がうちから1キロ程度のところを流れているので、海から川をさかのぼってきているのでしょう。それにしても異様な感じがあります。

    これに加えてスズメも確かにいたんです。そう言えば最近見てないような気が…。
    ((;゚▽゚)ガクガクブルブル

    まあ、“とり”あえず、カラスとハトとトンビとカモメが、うちの窓からたくさん見えますので、風景に飽きるということはありません。
    夜になれば、となりのビルの居酒屋で焼き鳥三昧です。


  • v038 なまずし

    ■なまずし

    特急車内モニタ
    札幌と実家のある北見を結ぶ「汽車」と「バス」には共に車内にモニターがあり、映画を観たり、眠ったりして移動します。窓の外には時々、野生の鹿などが見られます。
    5時間ほどかかりますがそれほど苦痛はありません。

    北海道だけかなと思いますが、にぎり寿司のことを「生寿司」(なまずし)と言います。生まれてから高卒までの18年間、にぎり寿司の正式名称を「なまずし」だと思って生きていました。

    東京に出てからしばらくは寿司そのものが食える状況ではなかったので、幸い「なまずし」という言葉を使う機会がありませんでした。そうしてしばらく暮らしていると、周りで「なまずし」という言葉を使っていないことにぼんやりと気付いてきます。そしてなぜか「なまずし」という言葉を口にしなくなりました。

    10年もすると、「昔、にぎり寿司のことを“なまずし”と言っていたような気がするが、気のせいだったろうか…」と、そう言っていたことすら忘れかけていました。本当です。「確か“なまずし”って言ってたような…」という感覚です。

    さて、実は今、母が入院しています。もう2か月になります。1か月間は集中治療室に入っていました。脳の働きを薬で止め、心臓を止め、人工呼吸器で生きていました。

    人間の親指くらいの大きな腫瘍が脳内にできていることを偶然検査で発見し、大事が起こる前に取り去る手術をしたのです。手術は13時間かかり成功しました。ところがやはり腫瘍が想像以上に大きかったので傷が大きく、脳が腫れて脳全体を圧迫し始めました。まさに想定外。それで緊急に脳の働きを止め、休ませる、という措置をとったというのです。

    それから、徐々に回復してきました。意識が戻ってからは、まず左半身が動かず、薬が効いているせいか、目の前の人が誰かもわからず、言葉もしゃべれない状態が続きました。それから少ししゃべれるようになり、少しずつ記憶が戻ってきました。体はもう筋肉が落ちてガリガリなんですが、冷たく動かなかった左半身も動き始めました。リハビリがうまくできそうなのでひと安心です。

    さて、かろうじて言葉が出るようになったころの話。目線はまだ宙をさまよっている感じで、元に戻らないんじゃないのかと心配になっている時、突然こう言いました。

    「はらへった」

    おもろいこと言うじゃないですか。まあ、チューブからの栄養剤だけで生きていたわけですから、何か食べたいという気持ちはわかりました。でもおもろすぎる。そこで私は「何が食べたい?」と聞いてみました。すると即答でこう言いました。

    「なまずし」

    またまたおもろいことを。いや、でもそうなんですよ。今でこそ100円だったりしますが、昔、食べたいものといえば、私も「なまずし」でしたし、やっぱり高級品でありました。100円じゃなく高級な寿司を食わせてやりますよ。

    しかし母がグルメに目覚めてなくて良かった。
    「フォアグラのなんとか」とか「キャビアのなんたら」なんて言われたら…。
    でもそんときは私はきっとこう答えるでしょう。

    「なまずしにしなさい」と。