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  • v038 なまずし

    ■なまずし

    特急車内モニタ
    札幌と実家のある北見を結ぶ「汽車」と「バス」には共に車内にモニターがあり、映画を観たり、眠ったりして移動します。窓の外には時々、野生の鹿などが見られます。
    5時間ほどかかりますがそれほど苦痛はありません。

    北海道だけかなと思いますが、にぎり寿司のことを「生寿司」(なまずし)と言います。生まれてから高卒までの18年間、にぎり寿司の正式名称を「なまずし」だと思って生きていました。

    東京に出てからしばらくは寿司そのものが食える状況ではなかったので、幸い「なまずし」という言葉を使う機会がありませんでした。そうしてしばらく暮らしていると、周りで「なまずし」という言葉を使っていないことにぼんやりと気付いてきます。そしてなぜか「なまずし」という言葉を口にしなくなりました。

    10年もすると、「昔、にぎり寿司のことを“なまずし”と言っていたような気がするが、気のせいだったろうか…」と、そう言っていたことすら忘れかけていました。本当です。「確か“なまずし”って言ってたような…」という感覚です。

    さて、実は今、母が入院しています。もう2か月になります。1か月間は集中治療室に入っていました。脳の働きを薬で止め、心臓を止め、人工呼吸器で生きていました。

    人間の親指くらいの大きな腫瘍が脳内にできていることを偶然検査で発見し、大事が起こる前に取り去る手術をしたのです。手術は13時間かかり成功しました。ところがやはり腫瘍が想像以上に大きかったので傷が大きく、脳が腫れて脳全体を圧迫し始めました。まさに想定外。それで緊急に脳の働きを止め、休ませる、という措置をとったというのです。

    それから、徐々に回復してきました。意識が戻ってからは、まず左半身が動かず、薬が効いているせいか、目の前の人が誰かもわからず、言葉もしゃべれない状態が続きました。それから少ししゃべれるようになり、少しずつ記憶が戻ってきました。体はもう筋肉が落ちてガリガリなんですが、冷たく動かなかった左半身も動き始めました。リハビリがうまくできそうなのでひと安心です。

    さて、かろうじて言葉が出るようになったころの話。目線はまだ宙をさまよっている感じで、元に戻らないんじゃないのかと心配になっている時、突然こう言いました。

    「はらへった」

    おもろいこと言うじゃないですか。まあ、チューブからの栄養剤だけで生きていたわけですから、何か食べたいという気持ちはわかりました。でもおもろすぎる。そこで私は「何が食べたい?」と聞いてみました。すると即答でこう言いました。

    「なまずし」

    またまたおもろいことを。いや、でもそうなんですよ。今でこそ100円だったりしますが、昔、食べたいものといえば、私も「なまずし」でしたし、やっぱり高級品でありました。100円じゃなく高級な寿司を食わせてやりますよ。

    しかし母がグルメに目覚めてなくて良かった。
    「フォアグラのなんとか」とか「キャビアのなんたら」なんて言われたら…。
    でもそんときは私はきっとこう答えるでしょう。

    「なまずしにしなさい」と。


  • v028 貝と言えばツブですが…

    ■貝と言えばツブですが…

    つぶ貝

    ホタテ、カキ、赤貝、ミル貝、トリ貝、アワビ…。酒のつまみには最高ですね。
    北海道に来てから、貝と言えばツブ貝が主流となりました。店ではよく突き出しに出てくるくらいポピュラーで、スーパーでも目立ちます。

    で、このツブ貝の刺身が思いのほかうまいのです。コリコリ具合が絶妙で、ひょっとするとアワビ以上にうまい。(個人差あり)
    有名なのは稚内近くの(かなり北)オホーツク側にある猿払(さるふつ)というところのツブ貝です。偶然、ある飲み屋でその猿払産のものを口にできました。あまりに美味しかったので、なくならないように、少しずつ少しずつ食べたのでした…。(貧)

    ある日、スーパーで生きているツブ貝が1個168円の特売だったので3個衝動買いしてしまいました。(通常は1個700円くらいで売っていたりします)

    『買ったはいいが、どうやってさばくのだろう』

    刺身と言っても少し湯通しするのではないだろうか。できればその方が生き物を直接殺した感じが半減するのでありがたい。巻き貝なので生きたまま引きずり出すのは酷ってもんだし、動いているものを切り刻むのはできれば避けたい。が、それはあまりにも非現実的でありました。

    ネットでさばき方を発見して思わず笑ってしまいました。
    1 ハンマーで殻を叩き割る(大笑い)
    2 身を引きずり出す(笑い)
    3 不要な部分を取り除く(内臓を切り取る)(微笑)
    4 唾液腺(アブラ・毒)を手で取り除く(汗)
    5 生きたまま食べやすい大きさに切る(笑い)

    ぐにゃぐにゃと生きている状態で切り刻むこととなりました。3個も。
    以前、生きている毛ガニを買った時も目をつぶりながら熱湯に投入しましたが、今回もまた人は殺生によって生きていることを実感するのでした。何を今さらという感じでもありますが、長年、生き物に手をかけてこなかったので、逆におかしな感覚が支配してしまったのでしょう。

    ツブ貝をひとつ左手に取ります。右手にハンマーを持ち、コツコツを叩くと殻は簡単に砕けていきます。殻が割れていくと、貝の身が膨張するようにせり出してきます。

    『なんまんだぶなんまんだぶ…』

    やがて身がすべて取れるので、内蔵部分や唾液腺を手でちぎったり包丁で切ったりします。 まだ生きて動いているツブ貝をスパスパっと切ってしまいます。そうやってひとつ殺り、ふたつ殺り、三つ目に差し掛かる頃にはもう慣れてきて、すっかり料理人の気分となっているのでした。
    味はもう最高。日本酒ですっかりご機嫌な食事となりました。


  • v019 初老のせいでタコのコリを取った

    ■初老のせいでタコのコリを取った

    猫のトラッシュ

    自宅でよく酒を飲みます。日本酒に焼酎、ワイン、紹興酒、ビール、などなど。
    居酒屋へは行く頻度が減りました。札幌には知り合いがほとんどいないですから、仕方ありません。

    おかげで仕事や愛や勇気や世界平和や地球温暖化に伴う人類の存亡についてのことや、新しいエネルギーへの転換が急務であることやドラフトの完全ウエーバーのこと、おいしい店の話やグレープフルーツの香りのダイエット効果のことや、西洋医学は根本的に間違っていること、現代人のほとんどが精神病であること、記念切手の発行が多すぎること、魚介類が人類への復讐を企てていること、ラーメンのポイントはやはり麺の縮れ具合であること、牛や豚の苦しみ悲しみについてのこと、地球は実は地獄であること、ネコも夢を見ること、放射性物質は半減期が数億年単位であること、CPUはタダの石の塊に見えるのにいろんな指示をきちんと聞く不思議についてのこと、などなど、について語ることが減っています。

    そんなある日、自宅で日本酒(比較的安い「まなぐ凧」という青森の純米酒)を、「凧」だからというわけではなく「タコの刺身」で飲んでいました。
    タコにはわさびが合います。わさびはしょう油に溶かすより、直接ネタに乗せてしょう油につけて食べるとわさびの風味が活きるらしいので、ねりわさびのチューブを手に、ねりねりっとタコに乗せました。

    「あっ、この透明性の高いゲル状のものは何だっ」

    チューブのキャップが黄緑で、ほとんど同じ大きさの、わさびのチューブによく似たそれは、肩こりに効くバンテリンという消炎剤でした。
    タコのコリがとれたかも知れません。それはともかく、これほどのマジボケは記憶がなく、

    「ついにここまできてしまったか…」

    というショック状態でビリビリしびれていました。これは老化なのでしょうか。
    でもよく考えたら、昔から、私の好きなハインラインの「夏への扉」を、何度読んでもすぐにストーリーを忘れてしまい、読む度に感動していたことも事実。これほどのマジボケの記憶がないのは、まさに記憶だけないのであって、かなり前からボケは始まっていたのかも知れません。
    こんなこと書いても何の意味もない。

    とにかくかつてないショックを受けたのであります。

    ※写真は酒が嫌いな我が家の猫です。どうでもいい、と言っています。


  • v010 ジンギスカン その2(衝撃)

    ■ジンギスカン その2(衝撃)

    警報機のランプ

    前回からの続きです。
    後日、また激安のジンギスカンを提供する店「モンゴル一丁目」へ行った時にちょっとした異変が起きていました。
    食べ放題が1380円と、600円も値下げされていたのです。しかし、食べ放題の対象は肉だけとなり、サラダやフルーツなどは別料金になっていました。その理由を聞いてみてびっくり。

    「実は1980円では高過ぎるというお客さんが多くてですね…」
    「えっっっ」
    「サラダやフルーツやアイスはいらないから安くしてほしいとの要望が多く…」
    「えーーーーーっっ!! なんで…」(おーい北海道、ずいぶん厳しいなー)
    「いいサービスだと思っていたんですが…」

    つまり、店のお客のアンケート結果を重視したというのです。
    サラダやフルーツがあるから良かったのに、と言ったら、あのサービスには自信はあったんですよ、という。本当にあれ以上は無理というほど努力はしたつもりだったのですが、と、さすがに残念そうでした。
    「まあでもいろいろ試しているところでして、来月は1580円にしてサラダバー付きにする予定です。フルーツをつけると経営が成り立ちませんのでそこはご理解いただいて、また来て下さい」
    ということだった。ご理解しますよ、そりゃあ。フルーツ高かろうが。野菜も高かろうが。ここのサラダって記憶では「レタス」「プチトマト」「ブロッコリー」「キュウリ」「ダイコン」「ベビーコーン」「ポテトサラダ」など、買って食べたらそこそこかかりますって。
    ミントのアイスで締めると後味サッパリでとても良かったのに、本当に残念。

    つまり、たまの外食でも1回の食事に2000円はかけられないよ、という道民のサインなのです。
    この景気の悪さですから、外食産業がバッタバッタとつぶれているのは事実です。
    やはり「超不況」の文字が頭に浮かぶのでした。
    ならばどのくらい安上がりか、自宅でジンギスカンをやってみました。確かに羊肉は豚や牛に比べて安く、野菜もモヤシかタマネギでいいのでこれまた経済的です。ラム肉は軟らかくて本当においしい。2人で野菜を含め1200円あれば腹一杯になります。そうしてみると「モンゴル一丁目」は「おトク感覚」より「贅沢感覚」になるのです。うーん…。(汗)

    とは言っても、自宅ジンギスカンは専用ナベが必要な上、煙も上がって、うちのように換気扇が壊れているとそれなりに悲惨なことになります。火災報知器が作動しないように気をつけて食べねばなりません。
    「窓開けろ、窓ーっ!!」
    「あーヤバいヤバい、警報機鳴っちゃう!!」
    「あおげあおげ!!」
    「あー、ネコが邪魔…」
    「肉焦げるぞー!!」
    結局ジンギスカンは店で食べるのがよさそうです。
    羊肉を自宅で食べる良い方法があります。ズバリ、煙の出ない「ラム肉のしゃぶしゃぶ」。
    野菜がやや高くつくのですが、水菜、春菊、ほうれん草などが合います。最高においしいです。本当です。

    食べれば食べるほど脂肪が燃え、ゲッソリとやせていく羊肉。
    あまりにうまいので思わず食べ過ぎてやせてしまいました。またさらにやせようと思います。


  • v009 ジンギスカン その1

    ■ジンギスカン その1

    警報機のランプ

    北海道名物といえば直線道路とジンギスカン。この直線道路というのもなかなか見事なのですが、今回はジンギスカンの話。
    今ジンギスカンがダイエットに有効だということで、全国的にブームなのだそうです。(もうブームは去ったのかな?)

    ダイエットの根拠を調べてみたところ、羊肉の脂肪の融点が44度ということで、36度程度の体内では分解されにくくそのまま排出されるとのことです(ただ確実とは言えない)。またすでに蓄積された脂肪を燃やしてくれるカルニチンという成分ががたくさん含まれているので、ダイエット効果が抜群なのだそうです。(食後の散歩など、軽い運動が必要と思われますが)
    食べれば食べるほど脂肪が燃え、ゲッソリとやせていくジンギスカンは最高です。

    札幌の宮ノ森というところに2000人を収容できるジンギスカンの店があります。この規模はさすが北海道。ラム肉食べ放題で1500円程度、飲み放題をつけても3500円。最初に出てくる肉の量が半端じゃないです。本当にすごいんです。飲み放題でチューハイを頼むと焼酎のボトルを勧められます。さあ飲め、という感じで出てくるので気分がいいです。
    当初は価格的にこれ以上は望めないだろうとひいきにしていたのですが、さらに魅力的なジンギスカンの店があったのです。

    7月末頃に発見したのは我が家から自転車で南に1時間(遠っ!!)のところにある「モンゴル一丁目」という店。チェーン店のひとつ。
    ここの食べ放題の内容がすごいったらない。ラム(子羊肉)・マトン(羊肉)のヒレ・セセリ(首)・もも・ホルモン系などのジンギスカンに加え、豚のカルビ・なんこつ・トントロ・ホルモン系、鶏肉・鶏のカルビ、ウインナーなどなど、どれをどれだけ食べても良く、さらにはサラダ(各種野菜、ポテト)食べ放題、デザート(各種だんごに各種ケーキ)食べ放題、フルーツも食べ放題(メロン・ライチ・ピングレ、すいか、バナナ、なぜか枝豆など)、いろんな種類のアイスクリーム食べ放題、みそ汁飲み放題、ライス食べ放題、おしんこ食べ放題、モンゴル茶(紅茶のようでとてもおいしい)飲み放題、これぜーんぶで1980円なのです。ま、胃袋の限界ってもんがありますが…。
    メロンいっぱい食べました。(なんとなく貧乏)
    さらに何杯でも生ビール1杯100円(キャンペーン期間中:もう終わった)だったので飲み物は単品でオーダー。
    あまりの内容に「この店採算とれてるのか」と心配になったくらいです。

    帰り際、店のアンケートに「また来ますよっ」などと書いて帰りました。
    そして後日、またこの店へ行ったのですが、オーダーの際、びっくりしてしまう話を店員から聞いてしまったのです。
    つづく…。
    てことでまた来週ーっ(もったいぶったテレビ番組かっ)