■なぜか意識が変化した日
1月10日、突然に「津別(つべつ)にある温泉」へ行くことにしたのです。大した理由はなく、天気がよかったからです。今回もカミさんとの旅です。
ホームページで見たら、冬期は片方の道路が閉鎖されているとありました。
調べたにもかかわらず、勘違いで、閉鎖された方の道へ向いました。しかも遠回りのルート。
北見を出て、下図、Aルートで向かうべきところ、Bルートの美幌(びほろ)へと向かってしまいました。
ただ、何が何でもその温泉に浸かりたいとも思ってはいなかったのです。だから風景を楽しみながら進んだのでした。さっそく美幌峠で休みつつ、美しい風景を堪能。
峠を越えて、見える風景は、言ってみればただの山なのですが、とても美しいのです。そして何だか外国にいるような感じでした。
もうこのあたりで、この「温泉の旅」の元は取りました。ええものを見せてもらいました。そんな気分で、津別峠へと向かいます。
「えええええ」
そりゃそうです。あっち側(Aルート)が閉鎖されてると思ってここに来ているのですから。
「なんてこった。どうする」
カーナビを眺めます。
「和琴半島に温泉がある」
「じゃそこでいいや」
その和琴半島って、聞いたこともなかったので、大して期待もせず、ただ風景に圧倒されながら進んだのでした。
「このへんは隠れスポットじゃないのか」
「有名だよ。念願の和琴半島だよ」
本当に有名なのか。私は知らなかったし、人もいないし、北海道は宣伝がヘタなんだなと、思いつつ、
「北海道は宣伝がヘタで良かったな。こんなスゴいところに人が来ないとは」
「季節だよ」
「あ、そーか。でも雪山が美しいのであり・・・」
でも、スゴいと言ってもただの風景ですから、特にカジノがあるわけじゃなし、屈斜路スカイツリーがあるわけじゃなし、ショッピングモールも地下街もないし、冬は耳がちぎれるような寒さがあるくらいで、来た人も困るし、リピーターにもならないだろう。一回見たら風景は飽きるに違いない。写真もいっぱいネットで見れるし。
なーんてことを思いながら、人はたくさん来ない方がいいと、密かに思いました。
さてその和琴半島は、屈斜路湖の南側にある半島で、でかい湖なのでまるで海でした。半島の先に着く直前に、釣りをしていた人がいました。幻の魚「イトウ」を狙っているのかも知れません。
そして、この反対側にありました、温泉です。
露天のみ。完全に露天のみ。吹きっさらし。そして混浴。いやー、ここっすか。入れって言われてもですね、アレですんで、とりあえず足湯で楽しませてもらいました。ここもまた絶景なんです。
もう別世界ですよね。一人だと怖いかも。
周辺をちょこっと歩いてみました。
さらに半島の先に向かう細い道があり、この先にも温泉があるみたいでした。そこをズンズン進みました。
共同浴場とは、主に温泉地に存在する、地元の人々が管理する温泉を利用した浴場、だそうです。では中に入りましょう。
人はいないのですが、いつ誰が来るかわからないので、また足湯をしました。泥の部分に足を入れるとちょっと恐怖感がありました。しかしここは好きな人にはたまらんと思います。
で、こっち側の風景もまた素晴らしいのです。
共同浴場から戻ってきたら、そのスズメではない鳥のいた場所に、こんなヤツらががいました。
そして帰路につきました。ここからわずかに2時間で帰れます。75kmですから、高性能センサー付き高性能車のドライバーなら1時間です。(笑)
考えてみれば、こんな風景がこの周辺にいっぱいあるわけです。それも何の観光名所にもなってないところも多分あるんです。
ふらっと出かけて、おにぎり食って帰れるんです。
クマ、車の故障、スリップ、転落などの恐怖と隣り合わせではありますが、焦りさえしなければ、面白いところです。
帰宅した翌日。
北見という土地について、突如、これまでと違う感覚に襲われました。おそらくそれは、車を使えば、自分の意志でどこにでも行ける状況に慣れてきて、意識が変わったのかも知れません。
「すごい風景が近所に普通にあるって、何だかスゴいぞ」感が襲ってきたのです。その感覚が広がって、普段の生活の場でさえ同じだと思えてきました。
もともと運転嫌いでした。小学生の時に見せられた警察の啓蒙ビデオのせいです。子どもをはねて死なせた青年が賠償問題で苦しみ、なおかつ被害者の悲しみを描く、暗く重い「交通安全ビデオ」。子どもに見せるなよ警察、40年前だけど。PTSDっすよ。
その後、東京・札幌での暮らしで車を必要とせず、運転する機会はほとんどありませんでした。しかし、ここでは生活に必須なので家の車を乗り始め、運転への抵抗感はなくなりました。
確かに自然破壊に一役買っているわけですが、イナカは物量的に、極端ではない。
北見には特別何もないという意識ばかりありましたが、自然を見てたら、人間に必要なものがここには何でもあるように思えてきました。
例えば深い森であったり、澄んだ空気や水であったり、クルミの木であったり、山菜であったり、山ぶどうであったり、シカやキツネであったり、白鳥やアカゲラであったり、イトトンボやアゲハだったり、全部がつながっている。ここには全部ある。
まあ、話半分としても、半分はある。(笑)
こんな贅沢があるだろうかと、改めて感じた1日でした。過去にもこんな体験たくさんしています。なのに今回は、しみじみと良い土地だなぁと感じたのでした。