■大規模「家庭菜園」 働き者は…

アリがズッキーニとカボチャを殺戮し、やむを得ず薬剤を使ってしまったその後については次号に書きます。今回は、とにかくよく働くセミプロのナオヒロくんの活躍について、記録をしておきたいと思います。
2つあったビニールハウスのひとつが雪で潰され、使用不能でしたが、もうひとつは骨組みは壊れていませんでした。


これを片付けるには、骨組みを引っこ抜かないとならないのですが、かなりしっかり組まれていて、結構な力仕事になります。それより私は、ちょっと怖くて触ることもできませんでした。
「ここ片付けたいっすね」とナオヒロくん。
「無理じゃね?」
「無理じゃないっす」
「アリの数もすごいよ」
「うーん」

そして翌日。

骨組みの鉄骨は40~50本脇にきれいにまとめてありました。そして様々なゴミ的なものを一輪車で運び出していました。坂を下って80メートルほどの距離の「D型倉庫」まで運びます。私は鉄骨をチマチマ運んであげて、5往復でヒザをやられてしまいました。
「ぅおおぅっ、ギブ、ギブ」私は死亡。
ナオヒロくんは淡々と仕事します。

素晴らしい。

そのからナオヒロくんは水の確保について考えていました。
以前使用されていたと思われる赤いタンクが転がっていて、それを見たナオヒロくんが言いました。
「修理すれば使えそうですっ」
「え、無理じゃね?、穴あいてるし」
「ここ、ボンドか何かで固めて、水漏れを防ぎます」
「えー、そうなの」
「ホースは使えそうなのがありました。蛇口を付ければある程度使えるカかも。問題はどう固定するか」
いろいろ考え、高度の高い斜面を削ってはめ込みました。その斜面はアリだらけでしたが、ナオヒロくんはヒルむことなく、スコップで切り崩しました。もちろん私も手伝いましたが、ヒザをやられているので、邪魔になっただけかも知れません。


しかしこれは雨水がうまく溜まらず、失敗でした。真上には邪魔をする枝がないのになぜか溜まりません。ただ、雨は定期的に降り、畑は普通に放置して問題ない状態でした。むしろ寒さの方がヤバかった。
6月に入り数日すると、特に畑周辺の雑草が伸びてきました。手作業では不可能でしたので、草刈り機を購入。貧乏な2人ですが、ナオヒロくんの貧乏は数段上で、しかしこんなにやる気エネルギーを潰してはイカンと思って、思い切って買ったのです。
「こんな刃物がグルグル回るものは怖くて使えんからさ」
「自分は何でも使えます」
「どこででも使っていいから自由にやっちゃって」
「あざっす。木の伐採も仕事でしたことあります」
「すげー」
「植樹も、ブタの世話も、何でも」
こんなに働くのになぜ貧乏かと言うと、想像はつくと思いますが、いわゆる季節労働者なんですね。一定以上収入がない。雨が降ると中止になったりして不安定。ボーナスもない。冬には仕事がほとんどなくなってしまう。ということで冬は冬眠するそうです。(笑)

6月の中旬に、まだ使えるビニールハウスのビニールが外れて(外されていたのかな)、地面に転がっていたのを、ナオヒロくんが少し天日に干して、破れたところを補修しながら直していきました。それも高さがあるので難しい作業なのですが、根性でハウスを復活させたのです。
「道具入れにも使えますよね」
「そーだねっ」
「ここに収穫物を入れておくんですよ」
「あーなるほどね」
「キツネからも守れますよ」

しかしこれ本当に大変だったようで、サクラの木が食い込むように伸びていたため、枝を少し切ったり、ビニールをうまくよけながら作っているうちに、支柱をしっかり固定させようと踏ん張っていた時に胸が「メリッ」とヤバい音がしたんだとか。
「あー、これはヤバいやつだ、あー」と独り言。
病院へ行ったら骨と骨を繋ぐ軟骨か何かにヒビが入っていたようです。行きつけの病院なので医者がナオヒロくんのことを良く知っており、
「ああ、3本にヒビが入っているね、キミは骨が丈夫だから折れないんだな」
普通なら折れてる、とか何とか言われたようです。

こうしてさらに貧乏も深まっていくのでありました。
豊かな収穫の秋を迎えたいっ。