■イルミネーション電車
路面電車はJR札幌駅の南側を、ちょっと縦長に、山手線みたいに大きくぐるりと回っています。が、なぜかちょっとの距離を残してつながっていません。
「何かあったんすか?」
といいたくなるような、視力検査の「右上が開いてるマーク」っぽい路線の形です。しかもJRからも微妙に遠くて、位置的に中途半端。8.4kmを約45分かけてガタンゴトンとゆっくり走り、電車の降り口ではその狭さも手伝って、よく支払いの客で人だかりとなっています。動いた、と思ったら信号待ちだったりして舌打ちもしばしば。
そんな遅くて不便でイライラが募る市電ですが、これは「風情」(ふぜい)と言って、現代社会の効率至上主義の対極にある、一種のあじわい世界なのであります。さまざまなことが些細なことのように感じられる空間、と思えばこれもまた人間社会には必要不可欠な存在と言えましょう。イライラしてはいけませんね。いけませんよイライラは。舌打ちなどもってのほかです。
そのノスタルジックな市電をデコレーションして走らせようとしている人たちがいることを知ったのは、1月のあるテレビの特集ででした。
去年の4月に開校したばかりの“札幌市立大学”のデザイン学部の学生が飾り付けをしていました。山と森と動物をモチーフに、250メートル・1万数千個の発光ダイオードを電車のボディにはり巡らし、点滅させるのです。
目的は市民や観光客を楽しませよう、新しい風物詩にしよう、というもので、札幌市と企業と大学生と市民とが、ボランティア作業協力で実現にこぎつけたんだそうです。冬の期間(1月中旬から2か月ほど)、雪の季節に光の電車を走らせることから“”と名付けていました。
それは確かに一度見てみたいと思っていましたから、路面電車の通りを歩くときはずっと気にしていました。しかし、それは1両だけなのでそう簡単ではありせんでした。黒い猫が前を横切る確率より低いかも、です。
ある日図書館へ行くために路面電車を利用することになりました。まだ明るい夕方、ちょうど電車が来ていて、猛然とダッシュして乗り込んだその電車がそれでした。乗ってしばらくしてから気付きました。
車内にも仕掛けがありましたが、やはり夜にならないと効果はありません。
ずっと見たいと思っていた電車は、まず内側から息を切らして見ることになりました。でもやっぱりこれは外側から見てナンボです。で、降りた後に見たのですが、明るいとパッとしません。汚いくらいです。(んなこたーない)
ラッキーなんだかアンラッキーなんだか。
その後やっと一度だけ、夜に見ることができました。やはり住んでいると1回くらいは遭遇するもんなんですね。それはやっぱりそれなりに綺麗でした。ちょうどカメラも持っていて、あわてて撮りましたっ。ばっちり撮ったー、と思ったら、シャッタースピードが遅過ぎて、超手ブレで見るも無惨な写真となってしまいました。
なんだかものすごく速い電車に思えたくらい、一瞬で通り過ぎていきました。
イルミネーションも良いのですが、ループにするのが先じゃないかなぁ、なんて、つい効率優先の風情のない考えが頭をヨギルのでした。
■第20回 愉快な札幌大発見:「親不孝」を逆さまにして「親孝行」
我が家から遠い場所にある居酒屋です。「親不孝」を逆さまにして「おやこうこう」と読ませているわけですが、何と言うか、ものすごくしつこいくらいに看板があり、「もういいよ」って思わせてくれます。まだ入ったことはありません。
できるものなら「まずい」って文字を逆さまに…。
第20回の節目の割には愉快でも大発見でもないですね。すいません。