■丸瀬布、やまびこ
1月15日、またまたカミさんが言うのです。
「丸瀬布のツアーに行きたい」
「なんでまた」
「氷瀑(ひょうばく)なんだよ。ライトアップのナイトツアーだよ」
「何言ってんの」
「ツアーで、“やまびこ温泉”にも入れて1200円という安さだよ」
温泉ならまあ毎日入ってもいいけどな、と思う。
「食事も付いてるよ」
てなわけで、うさんくさい安さと熱意に負けて、翌16日そのツアーの予約を入れて、17日に丸瀬布(まるせっぷ)へと向かったわけです。ホワイトアウトで遭難しそうな雪が舞う中の峠越え。そして新聞記事になってしまいました。
その翌日の北海道新聞です。一番読みやすい三面記事面(第一社会面)のほぼど真ん中に、大きな写真入りの記事が載っています。
「ああ、よりによってこんな目立つところにに載っちゃったかー」
私のフルネームとコメント、年齢も出ていました。
思えば、真っ暗になる17時に「40人ほどを乗せたマイクロバス」が、「やまびこ温泉」の施設から出発する際、NHKラジオと北海道新聞の取材記者が同乗していたのでした。
このイベントは「山彦(やまびこ)の滝ナイトツアー」といい、「滝の夜間観察会」とか「厳冬の山彦の滝観察会」とか「厳冬山彦の滝 ライトアップ観察会」とか「山彦の滝ナイトツアー・観察会」とか「ライトアップした滝の夜間観察会」とか、どれが正式名称か分からないほどいろんな呼ばれ方をしています。
ちなみに、滝が凍るなどして出来るものをヒョウバクと言いまして、「闇夜に浮かぶ巨大な氷瀑を観察」と言えば、それがイベント名に聞こえたりもします。
毎年1~3月、月2回開催、という感じです。
今年この日が最初だったようで、30人ほどの参加者がいました。スタッフを入れると約50名でライトアップを楽しむことになります。
しかし、山奥ですし、街灯もなく、なんともまあ怖い場所です。
実は、このイベントの前に、昼間の滝を見ようと早めに到着して、現地へと向かったのです。事前情報として少し写真。
雪がふわふわに積もっていてハンドルを取られます。ここで動けなくなったら悲惨です。非力な軽自動車では結構心配です。そして出ました、毎度おなじみの「通行止」。
こういう場所です。
で、17時(すでに真っ暗です)、やまびこ温泉前からバスが出まして、バスの中で普通のおじさん(町職員?)がマイクを持ってしゃべり出しました。
「えー、みなさん、・・・ご参加・・・ありがとうございます」
あまり流暢ではない語りが好印象でした。昔の町の様子やら、たまたま私が5~6才の頃に丸瀬布に住んでいたこともあり、興味深い話が聞けました。
滝については、東を向いていることが特徴で、しかも真東ということが非常に珍しく、日本ではここしかない、と力説していました。そのことが「ご利益がある」理由となっていて、成田不動尊(不動明王)が祀られ、毎年7月28日には滝まつり(例祭)が行われているのだそうです。
氷柱の出来方や、今年の特徴など、滝のいろいろな情報を聞くことで、面白みも増していきました。
いよいよ通行止めラインも突破。
ここから滝まで200m歩きます。山を登ります。
まず目に飛び込んできたのは、たいまつの炎。先頭と中間と最後尾の人(お客さん)が持ちます。(持ちたい人いるー? と希望者に渡されてました)
これはもうワクワクする風景です。子どもはすごく喜ぶと思います。帰りには特別な滑り台がありますし、昔ながらの過保護ではない普通の遊びがここにあります。(笑)
「うわー、ななな、なんじゃこりゃあ」
「なんじゃこりゃあよぉー」
もうふざけているとしか思えないほどの氷の柱。こんなの初めて見ました。この柱の中を水が流れているんだそうです。
後で調べてみたら、この滝の水量は少なく、夏場は薄いカーテンのようになって、滝の裏側からの景色もまた美しいようです。
今回の氷の出来方が、いつもと違って、柱の裏側に氷が落下し、通り抜けできませんでした。珍しいことだそうです。
昔、この辺に蒸気機関車(雨宮21号)が走っていて、材木の運搬に使われていたそうで、その時に機関車の滑り止めに使われていた砂をこのようにお祈りをしてパワーを込めまして、受験生のための「滑り止め」のお守りとして受験生たちに配っているらしいです。多分、「町」が学校に無料で配っているのかなと思います。
ここでも欲しい人に配っていたのかな、私興味がなかったので写真を撮っていてそのへんのことはよく分かりませんでした。
このお守りの砂は今のところ100%の効果があるそうです。誰もスベってないと。
何と言っても「真東向きで御利益がある滝で合格祈願パワーを込めた」超強力なお守りなのです。お笑い芸人にも必須の砂ですね。
さて、いよいよライトアップするのですが、全部見せるのもアレですし、赤とミックスだけ。こんな感じです。
で、個人的な感想としては、ライトアップはまあまあキレイとは思いますが、やらなくても良いかも、が正直なところです。でも、これが印象に残ってまた見に来る人もいると思いますし、生の色も両方見ることが出来るので、目くじら立ててダメっていうほどでもありません。
ライトアップがひと通り終わり、主催者の感謝の言葉で拍手が起こりました。
もふもふもふもふ・・・
(みんな手袋をしているのでパチパチパチではなく、音がもふもふもふ)
やっぱ色はなくてもこの形状、この迫力、自然は自然に見るのが美しいです。
(普通の電球の光も自然じゃないけど)
で、なぜ新聞に名前が出ちゃったのか。最初にバスに乗る時に取材陣がいることは分かっていました。それで、大したコメントも出来ないし、避けるようにはしていました。避けて避けていたら、ウラのウラはオモテみたいな感じで、となりに記者がいたわけです。
「あっちゃー」
声もかけやすかったんでしょう。昔からよく道聞かれますし。
どうですか、と速攻で感想を聞かれてしまい、ついひと言ふた言答えてしまい、別に悪いことしてるわけじゃ無し、名前を聞かれて答えたという次第。
そして、カミさんにはラジオもやってきました。声をかけやすかったのでしょう。夫婦で両側からコメントを求められるという、「なんだこの状況」みたいになってました。
しばらくヒョウバクを眺め、あまり寒さも感じず、十分に楽しみました。
「本日はありがとうございましたぁー」と主催者の声。
盛大なる拍手。
もふもふもふもふもふもふもふもふ・・・
さて、引き返します。
帰り道。最後のお楽しみは滑り台。
最後の20メートルほどですが、ワイルドな滑り台(ただのスロープ)を、尻に農協の肥料袋を敷いて、滑り降ります。希望者なら誰でも。私も滑りましたが、顔に雪が当たりまくり、呼吸困難となり、到着するととたんに顔が冷たさで痛くなりました。アイスを一気に10個くらい食べて頭が痛くなったような、恐ろしい罰ゲームのような痛み。
子どもは喜んで何回も滑ってました。結構なスピードです。合格祈願の砂の効果はありません。
帰りに温泉に浸かり、肌がすべすべになって、すべすべの道路にも滑らず(合格祈願を見た滑り止め効果か)、暴風雪警報の中、無事帰宅しました。
付け足し。
このツアーは遠軽町が主催なので格安。現場では甘酒やコーヒーも振舞われてこの値段。夏場もとても面白そうなイベントをやっているようです。自然や昆虫などが好きな人、子どもには特に良い企画だなぁと思いました。
付け足し2。
このやまびこ温泉には宿泊施設がなく、夜は9時まで。約2kmのところにマウレ山荘(v249の記事の最後の方に書きました)があり、ちょっと贅沢な宿泊となかなかスゴい温泉で、仕事にクタクタに疲れボロボロになった心をリフレッシュできます。食事も評判が高いです。
付け足し3
やまびこの滝から先500メートルのところに、もうひとつ滝があり、そちらもエキサイティングらしいのですが、夏場に歩きでしか行けません。冬はとっても危険。
鹿が多く現れることから「鹿鳴(ろくめい)の滝」と言われています。
付け足し4。
北海道の観光協会や、記事中の当事者等からはお菓子やワイロや機密費などはもらっていません。(笑)