■どうなる菊芋 その2(移植手術)
恐怖のアリ塚と化してしまった菊芋を植えた2個所とその周辺に、ずいぶん前に購入した「ワサビとニンニク入りの木酢液」(忌避剤)を高濃度にして蒔きました。(この特殊な木酢液もなかなか貴重なものと思います。数年前に気になって丸瀬布の道の駅で買いました)
その後、アリがよりひどい方のひとつだけ、菊芋を別の場所に移植しました。
そして2日後に見てみると、何とアリがいなくなっていたのです。なかなか凶暴な連中ですので、これはすごい。木酢液なので、殺虫剤とは違います。アリを殺すことなく、他所へ行ってもらえたわけです。
さて、菊芋に関しては、何としても多くの収穫を目指したいので、「芽欠き」もしておこうと思いました。ジャガイモの場合、芽欠きをすることで大粒になるとか何とか、それと同じだろうと、漠然と思っただけです。(ひょっとしたら違うかも、葉が多いほど養分を葉から送るかも)
1か所から複数の芽が出ているところは、1本にしてみようと思いました。
このように複数の芽が出ています。とにかくでかくなる植物なので、元気なやつ1本にするのです。それ以外は引っこ抜いて…うーん…
もったいないだろ。何か方法はないのかっ。
もしかして、ひとつの種芋から芽が複数出ている場合、種芋にメスを入れ、カットして移植すれば良いのではないだろうか。もし切り傷からバイ菌が入り病気になるなど、失敗したら全滅ということになってしまいますが、先生どうしますか。
「私、失敗しないので」
はいはい、わっかりました。
ということで、6月19日(火)にオペを開始しました。
左上をご覧ください。
ここには4本芽が出ています。多分ここは種芋を2個入れてあり、上1つと、下3つに分かれているはずです。下の3つのうちの上の2つがやや弱々しい。
そこで右上の写真。
少し土を掘り、土を退けてから、弱々しい2つと大きな芽の間に果物ナイフでサクッと切り込みました。分断の手応え。
左下をご覧ください。
そこに外側からシャベルを深く差し込み、グイッと起こすと…
右下の写真ですね、
キレイに芋付きの芽が取れました。今思えば、これがビギナーズラックだったのかもしれません。
両端が結構離れているのでその2本は残し、中の2本を急いで別のところに移植するのですが、約50m離れたところに移植します。走る。走る。ゼイゼイ。穴掘る。EM水撒く。植える。土を被せて、またEM水をかける。
2人救済。(写真はそのひとつ)
これをやったら時間が来てしまいました。実は早朝にやっているので、9時には職場に戻らないといけません。結局この日はアリに占拠された菊芋1人と、移植が2人で、3人救済しました。
それから雨などで行けず、3日後に移植手術に出かけました。
「クランケはこれけ?」
ひとつの芋のかなり近い部分から2つの芽が出ています。これを芋ごと分断し、片方を別の場所へ移植します。
少し土を払って、まあこんなもんだろう、と安易に切り込みます。クイっと持ち上げてみると、なんということでしょう、芋本体がなく、芽の出たところからスパッと切れていました。
「おーまいがーおーまいがー」
自分で埋めたのに、思ってた以上に深く、芋に届いていなかったのです。
「先生、早く処置しないと、クランケが死んでしまいます」
「あたふたあたふた」
初球から2塁へ盗塁するかのごとく、超絶な俊足を飛ばして、ヤバくなっている患者さんを50メートル先の畑へと、水のたっぷり入った10リットルジョウロも持って移動し、瞬時に切断部分を地面と接合し、EM水をかけました。
あとは本人の体力と気力と奇跡のEM菌に期待するしかありません。
何事なかったかのように次のクランケへと急ぎました。
次のやつは4本の芽が出ていました。これです。
1本がかなり小さいです。右に少し離れて生えているのはヨモギです。
さっきの菊芋で殺人先生のようになっているので、今度は慎重に行います。芋の位置を確実に把握するために芋が出てくるまで掘りました。よく芽が出たなというくらい、かなり深くにぶっこんでいました。
掘っても掘っても出てこないので、でかいスコップでうんと下からグイッと持ち上げました。
左上…スコップをザクッと入れ、下から掘り起こす。
右上…芋ごと持ち上げ、ナイフで大きな芽1本と残り3本に分断(持っているのは大きな芽)
左下…3本をきれいにスライスして移植の準備
右下…1本は元に植え戻し
そしてこの後も重たいジョウロと患者たちを抱えて50メートル、盗人のように走り、菓子職人のように土にデコレーションしました。
緑の矢印は前回移植した2人、黄色と赤が今回の5人、赤は写真の外側なので見えていない。
このウネにはニンジンの種を蒔いていますが、芽が出ないかもしれないし、まあいいやと、混植です。
この後、もうひとつ、5本の芽を分断し移植しました。その様子は文字で。
「おお、ここは5人も出ているぞ」
「1人がかなり小さいな、くりっと回して抜いてみようかな、ポロッ あっ」(1人危篤)
「ヤベー」
「ふー、これまた厄介だな。芋本体からやけに細く伸びている」
「触っているだけで芽が芋本体から分離されてしまいそうだ、ポロッ あっ」(1人危篤)
「いかんな、まずこれ2人を救わねば」
「いや、そしたら2往復走らないといかんぞ、200メートル走はきついぞ。私が死ぬわ」
「緊急事態だ。こうなったら、近くに移植だ」
ということで10メートル程度離れた場所に移植しました。
EM水をたっぷり使いながら、危篤の2人を移植。残った3人のうち2人を、やはりその近くに移植。
やがて畑にのどかな平和な空気が戻ってきました。
まだ多くの菊芋の芽が出ていなかったりしますが、結局移植した本数は12本。全部が生存してくれたら「名医」の仲間入りですね。
それらを含む全体の菊芋の数は、何と34人となりました。全員が元気に育ってくれたらいいですね。
大丈夫、菊芋の生命力はかなり強いはずですから。
・・・
さて、手術から5日。移植した12人は、何と全員生存していました。(ヤッホー)
明日からブラックジャックと呼ばれても驚きません。